Feb. 5, 2025ウォール・ストリートジャーナル社説より
https://www.wsj.com/opinion/trumps-plan-to-free-the-palestinians-gaza-strip-foreign-policy-middle-east-87ae687d?mod=Searchresults_pos1&page=1
トランプのパレスチナ「ガザ所有、住民移住構想」は世界中から批判を浴びていますが、パレスチナ人のこれ以上の犠牲を防ぎ、人命を守ることを最優先に考える提案とみることができる、との主張がウォール・ストリートジャーナル誌にあります。
1. トランプの衝撃的な提案—ガザ住民の再定住の意義
トランプ大統領は「ガザ住民を近隣諸国に再定住させる」という提案を行い、世界を驚かせた。問題はこの提案が「残酷」だからではない。この提案の核心は、これまで数十年間当然とされてきた考え方に根本的に転換するものだからである。
- 今回の提案の意義は「パレスチナ人の命を優先する」という考え方そのものにある
- トランプは、「ガザという『解体現場(demolition site)』を脱出し、平和の中で生きるほうが、砲火の餌食(cannon fodder)にされるよりもはるかに良い」と主張
- これまでの歴史の中で、パレスチナ人は彼らの指導者たちによって、「失われた大義(lost cause)」のために犠牲として捧げられ、それが当然と考えられてきた
2. パレスチナ指導者の犠牲戦略
(1)ハマスの指導者が語る「戦争のための犠牲」
2023年10月19日、ハマスの指導者ハーリド・マーシャルは次のように発言した。
- 「イスラエルの破壊という夢を実現するため、つまり『川から海までのアラブ・パレスチナ』を実現するためには、数百万人のパレスチナ人が死ぬことも厭わない。」
- これは彼にとって問題ではない。むしろ当然の代償なのだ。
(2)歴代のパレスチナ指導者による和平拒否
- かつてPLO(パレスチナ解放機構)のヤーセル・アラファトとマフムード・アッバースは、イスラエル側からの国家承認の提案を拒否した。
- これは、国家解放運動の歴史において前例のない行動である。
- さらに、1920年代から1940年代にかけてのパレスチナ指導者であり、ヒトラーの盟友でもあったアミン・アル・フセイニも、イスラエル建国以前に同様の拒否を続けていた。
(3)ガザの存在意義とは?
- ガザはパレスチナ人を「永遠の難民」として維持し、イスラエルとの「永久戦争(forever war)」を続けるための装置として機能している。
- もともと、アラブ諸国が1948年の戦争でユダヤ人を根絶しようとした試みは失敗に終わった。
- それにも関わらず、パレスチナ人の「被害者性(victimization)」と「シオニストの侵略に対する英雄的抵抗(valiant resistance)」という物語が作り上げられた。
- その結果、歴代のパレスチナ指導者たちは、「ユダヤ人国家と共存する」よりも「自らの世代が苦しむこと」を選び続けた。
3. アラブ諸国の対応—パレスチナ人を戦争の駒として利用
- この「排除主義的ナショナリズム(eliminationist nationalism)」は、パレスチナ人自身に苦しみをもたらす最悪の形のナショナリズムである。
- しかし、アラブ諸国はこの考え方を長年容認してきた。
- それによって、彼ら自身がパレスチナ人の再定住の負担を負うことなく済んだからである。
- また、イスラエルを殲滅する戦争を開始し、敗北するリスクを避けることができた。
- 「パレスチナ人に戦わせ、彼らを死なせよう」—これがアラブ諸国の論理だった。
4. UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の役割
- 1949年に設立されたUNRWAは、本来「アラブ諸国の敗北によって発生したパレスチナ難民を再定住させ、その後解散する」ことを目的としていた。
- しかし、アラブ諸国とソ連の圧力により、UNRWAは「失われた大義(lost cause)」を維持するための装置に変質。
- トランプのガザ再定住案は、彼のUNRWAへの資金提供停止という決定と一致する。「UNRWAが決してやらなかったことを、トランプがやろうとしている」
5. イスラエルの視点—トランプ提案の影響
- イスラエルにとっての最優先事項は「安全保障」と「テロの根絶」
- ハマスのガザ支配が続く限り、テロの脅威はなくならない。
- UNRWAが支援を続ける限り、パレスチナ人は「戦争の道具」として利用され続ける。
- トランプ提案がもたらす可能性
- サウジアラビアとの和平交渉の「交渉材料」となる。
- ガザの責任をアラブ諸国が負うことで、イスラエルの負担を軽減。
6. トランプ提案の核心
- UNRWAへの資金提供を停止し、パレスチナ人を戦争から解放する。
- ガザ住民の移住先を確保し、長期的な安定を確立する。
- アラブ諸国にガザの責任を取らせることで、イスラエルへの負担を軽減する。
7. 結論—「失われた大義」を崩壊させるか?
- もしこの提案が実行されれば、パレスチナ人は「戦争の駒」ではなく「平和の住民」としての未来を手にすることができる。
- しかし、それを阻もうとする勢力がいる。
- 「永遠の戦争」から利益を得ている者たちは、パレスチナ人が自由を得ることを許さないだろう。
- それこそが、トランプの提案が「多くの人々にとって耐え難いもの」となっている真の理由。
補足:パレスチナ難民がガザに住み続ける理由
パレスチナ難民がガザ地区に住んでいる理由には、歴史的な戦争、政治的な要因、国際社会の対応など、複数の要素が絡んでいる
- 1948年の戦争で逃れたパレスチナ人がガザに押し込められた(エジプト統治時代)。
- 1967年の戦争でイスラエルが占領し、ガザの住民が移動する手段を失った。
- UNRWAが難民の再定住を進めなかったため、パレスチナ人は「恒久的な難民」となった。
- ハマスが支配し、イスラエルとエジプトが封鎖したことで、ガザの外に移動できなくなった。
- アラブ諸国がパレスチナ人の受け入れを拒否し、ガザの住民は行き場を失った。
これらの結果として、ガザ地区は世界でも類を見ない「永久難民キャンプ」のような状態となり、紛争と封鎖の悪循環が続いている。
1. 1948年の第一次中東戦争による大量流入
「ナクバ(大災厄)」として知られる難民発生の契機
- 1948年、イスラエル建国を受けて、第一次中東戦争が勃発。
- アラブ諸国(エジプト、ヨルダン、シリア、イラク、レバノンなど)がイスラエルを攻撃するも敗北。
- イスラエル軍の進軍や戦闘の影響で、多くのパレスチナ人が故郷を追われた。
- 約70万人のパレスチナ人が難民となり、その一部がガザ地区へ逃れた。
- その後、エジプトがガザを占領し、パレスチナ人を受け入れるが、市民権は与えず難民として扱う。
2. 1967年の第三次中東戦争によるガザのイスラエル占領
- 1967年の第三次中東戦争(六日戦争)でイスラエルがガザ地区を占領。
- これにより、ガザ地区のパレスチナ難民は再び行き場を失い、イスラエルの軍政下での生活を余儀なくされる。
- イスラエルはガザの支配を強化するが、大規模な移住や再定住の政策は取らず、難民の状況は固定化された。
3. 国連機関(UNRWA)の設立と難民キャンプの恒久化
- 1949年、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が設立され、ガザ地区にも難民キャンプが作られた。
- 本来は一時的な難民支援のはずだったが、パレスチナ問題が解決せず、「恒久的な難民状態」になった。
- UNRWAは他の難民機関(UNHCR)と違い、難民の再定住を進めないため、パレスチナ人は「永遠の難民」となった。
- 現在、ガザの人口の約70%が難民とその子孫。
4. 2007年以降のハマス支配と封鎖
- 2005年、イスラエルがガザから撤退(入植地を撤廃)するも、2007年にハマスがガザを掌握。
- これにより、イスラエルとエジプトがガザ地区を封鎖し、住民の移動や物資の流入が制限される。
- パレスチナ人は、ガザから移住する手段を失い、ここに留まらざるを得なくなった。
5. 国際社会とアラブ諸国の対応
- アラブ諸国(特にエジプトとヨルダン)は、パレスチナ難民の本格的な定住を拒否。
- 理由①:パレスチナ人を受け入れると「パレスチナ国家建設」が難しくなる。
- 理由②:パレスチナ難民を利用し、イスラエルとの対立を維持するため。
- その結果、パレスチナ難民はガザ地区を離れる選択肢を持たず、封鎖されたままとなった。
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