「地方創生」の現状と課題ーなぜ同じ議論が繰り返されるのか

日経新聞が「エビデンス不全 地方創生の虚実」という特集を組んでいますhttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE216IC0R20C25A1000000/
「地方創生のための予算が無駄に使われ、十分な効果を上げていない」という指摘は、メディアでも頻繁に取り上げられます。しかし、この議論は本質を突かないまま繰り返され、根本的な解決には至っていません。
なぜこの状況が続くのか。本記事では、地方創生政策が抱える構造的な問題を整理し、その解決策を考えます。
地方創生の目的が曖昧なまま進められている
「地方創生」とは、少子高齢化や人口減少、東京圏への人口集中といった課題を解決し、地域の持続的な発展を目指す取り組みとされています。しかし、その目的自体が明確に定義されていないため、政策の方向性も曖昧です。
- 「地域経済の活性化」が目的なのか、「最低限の社会生活の維持」が目的なのかが定まっていない
- そのため、施策の目標がバラバラになり、結果として実効性の低い対策ばかりが並ぶ
これでは、どれほど予算を投入しても問題の根本解決には至りません。
無責任な構造――政治、行政、メディアの思惑が絡み合う
地方創生政策が効果を上げない背景には、政治、行政、メディアそれぞれの思惑があります。
1. 政治家の思惑
- 地元への貢献をアピールし、選挙での支持を得たい
- 目玉政策として「地方創生」のスローガンを掲げるが、中身は薄い
- 政権が変わるたびに施策のイメージを変えようとするが看板の架け替えに終始している
2. 行政の思惑
- 各省庁がバラバラに政策を立案し、連携が取れていない
- 予算の獲得が目的化し、実効性よりも「やった感」を重視
- 短期間で成果を求められ、長期的な戦略が不在
3. メディアの思惑
- 「地方の衰退」を煽り、危機感を醸成する
- 一方で、政府や自治体の施策に対して「予算の無駄遣い」と批判する
- 建設的な議論を促すのではなく、不安を煽り、手続きの問題点を指摘する報道が中心
これらの構造が絡み合うことで、同じ議論が繰り返され、問題の本質には踏み込めないままになっています。
地方創生の実効性を高めるために必要な改革
地方創生を本当に成功させるためには、以下のような改革が求められます。
1. 目的の明確化と政策の一貫性
- 「地方創生」の目的、目指すべき方向性と国・地方の役割分担を明確化する
- その際特に「経済活性化」と「社会基盤の維持」を分けて考え、それぞれに適した施策を講じる
2. 短期的な対策から長期的な戦略へシフト
- 選挙対策のための場当たり的な政策ではなく、10年・20年先を見据えた戦略を立案
- 社会基盤の維持、最低限のインフラ整備は国の責任で一定水準の確保を図る
- 地域経済の活性化は各自治体の自主性を尊重し、地域ごとに対応を検討する
3. メディアの報道姿勢の見直し
- 単なる批判ではなく、建設的な議論を促す報道を心がける
- 成功事例を積極的に紹介し、ポジティブな取り組みを後押し
まとめ
地方創生の議論は、これまで繰り返されてきたものの、実質的な進展はほとんどありません。その背景には、政治・行政・メディアそれぞれの思惑があり、根本的な課題解決よりも「やっている感」を出すことが優先されてきた現状があります。
本当に地方創生を成功させるためには、政策の目的を明確にし、一貫性のある長期的な戦略を打ち出すことが不可欠です。また、予算の適正配分と効果検証を徹底し、メディアも建設的な議論を促す役割を果たすべきです。
地方創生は、単なるスローガンではなく、日本の未来を左右する重要な課題です。本質的な議論と実効性のある政策を求めていく必要があります。