2025.01.16 2025.01.26

中国公務員の実態：憧れの“鉄の飯碗”が招く摩擦と現実

amh

The Economist 11th Jan 2025 Chinaセクションから

A pay rise for government workers sparks anger and envy in China (from @TheEconomist) https://t.co/RnYdTOS6Qy
中国公務員の実態：給与増額で羨望を集めるも、腐敗防止やモチベ低下で揺れる“鉄の飯碗”。「羨望」と「皮肉」が交錯する現状
かつての日本の公務員と似てきたか？
— AMH (@amhblog) January 15, 2025

中国の公務員への給与引き上げは、経済活性化と消費拡大を目的とする政策の一環として注目されている。しかし、給与増加幅はわずかでや地方政府の財政難となるいっぽう、厳しい政治的制約や行動制限などの問題が重なり、公務員自身の不満や国民の批判を引き起こしている。引き続き公務員の人気職だが、現状は「羨望」と「皮肉」が交錯する複雑な状況となっている。

1. 公務員給与引き上げに対する世間の反応

概要
- 中国経済の停滞により民間企業でのリストラや賃金カットが続く中、公務員給与の引き上げが発表され、国民の不満と批判が噴出。
- 増額は月数十ドル程度で、2021年以来初の改定だが、地方自治体による遅配や削減が不安材料となっている。
具体例
- SNSでの反応：「ソ連時代のジョーク」を引用し、公務員を揶揄する声。
- 地方の教師や公務員が「昇給の通知すら受けていない」と報告。
- 民間の労働者からの声：「給与が増えるのは羨ましいが、私たちの生活はどうなるのか？」

2. 経済政策としての給与引き上げの狙い

概要
- 政府は内需拡大と消費促進を通じた経済成長を目指しており、公務員給与の増額もその一環。
- 地方自治体への財政支援により、債務再編や経済活動の活性化を図る動きが進む。
具体例
- ロイターの推定：給与引き上げは一時的に約120～200億ドルを市場に注入する効果がある。
- 地方政府への支援：5年間で最大10兆元（約1.4兆ドル）の債券発行を許可。
- 消費拡大の狙い：公務員が消費活動をリードすることで、景気回復を促進。

3. 公務員のモチベーション低下とその背景

概要
- 長年の「ベルト締め政策」や、腐敗防止の取り組みが公務員のやる気を削ぎ、勤務態度に影響を与えている。
- 給与が低い上に、政治的教育や監視体制の強化が負担となっている。
具体例
- 「寝そべり（躺平）」文化：2022年に党員アカデミーの学者が「公務員の怠慢化」を指摘。
- 国家テレビの風刺：2023年春節の特番で「公務員の怠慢」を風刺する内容が放送され、多くの視聴者が共感を示した。
- 腐敗防止の影響：キックバックの機会が減少し、リスクを恐れた公務員が新規プロジェクトへの関与を避ける傾向。

4. 公務員への生活面での制約

概要
- 海外渡航制限やプライバシー侵害とも取れる厳しい管理体制が課されており、公務員の生活の自由が狭まっている。
- 国際的な連絡や情報漏洩防止が理由だが、公務員の不満が高まる一因となっている。
具体例
- パスポート管理：教師や学者など、一般的に機密性が低い職種の公務員にも適用され、パスポートの返却には詳細な理由書が必要。
- 制限の影響：海外旅行を計画する多くの公務員が「手続きが煩雑すぎる」とSNSで不満を漏らす。

5. 公務員職の人気と社会の皮肉

概要
- 公務員職は依然として中国社会で高い人気を誇るが、その一方で国民の間では「特権階級」としての皮肉や批判が高まっている。
- 若者の高い失業率が、ますます公務員試験への競争率を押し上げている。
具体例
- 2023年12月の試験受験者数：過去最高の340万人が応募し、倍率は80倍以上。
- SNSでの批判例：重慶市の党幹部が「公務員が消費活動を率先すべき」と発言し、「収入がなければ支出はできない」といった批判が殺到。
- ネット上の皮肉：「公務員の給与増加は、私たちには関係ない」。

まとめ

　中国の公務員給与引き上げ政策は、一見すると消費拡大を目指す合理的な施策に見えるが、地方自治体の財政難や公務員自身の生活・労働環境の悪化が複雑な感情を呼び起こしている。さらに、民間業の労働者や失業中の若者からの不満と批判が相まって、「鉄の飯碗」をめぐる議論は社会の不安定さを象徴する問題となっている。

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