世界情勢

英国イングランドの地方分権改革案

amh
The Economist 16th Jan 2025より
  • 英国政府の自治体改革案が各地域の実情や歴史的背景を無視していると、地方政治家から激しい反発。
  • 改革案の内容は地方分権を強化し自治体により大きな権限と責任を与えるため二層構造の廃止、統合自治体の導入、市長制度の拡大、財政運営の自由度向上が柱。
  • 保守党や地方の一部からは、改革による政治的影響や財政面の懸念が指摘されているが、政府は2026年までに大規模な分権改革を完了する計画。

https://www.economist.com/britain/2025/01/16/a-plan-to-reorganise-local-government-in-england-runs-into-opposition

1. 改革の目的

  • 地方分権の推進
    • イングランドは先進国の中で最も中央集権的な国家となっており、地方自治体に権限を移譲することで地域の成長を促進する。
  • 経済成長の促進
    • 地方のリーダーが地域の特性を活かした政策を実施することで、生産性を向上させ、雇用創出につなげる。
  • 公共サービスの効率化
    • 地域ごとのニーズに合わせた政策を実施し、住民にとってより効果的な公共サービスを提供。
  • 政治への信頼回復
    • 直接選挙で選ばれた市長(Mayors)が地域政策を主導することで、住民の政治参加を促し、説明責任を強化する。
  • 政府と地方の関係の再構築
    • 地方自治体の独立性を高め、政府の過度な介入を抑え、自治体が自主的に運営できる仕組みを作る。

2. 英国自治体の現状

  • 中央集権的な統治構造
    • ほとんどの決定が中央政府(Whitehall)によって行われ、地方の自主性が制限されている。
  • 二層構造の地方自治体(Two-tier system)
    • 地区議会(District Councils):都市計画、ごみ収集などの業務を担当。
    • 郡議会(County Councils):交通、高齢者福祉など広域的な業務を担当。
  • 統合自治体(Unitary Authorities)の導入
    • 既に一部の地域では、郡と地区を統合した「統合自治体(Unitary Authorities)」が運営されているが、全国的な導入は進んでいない。
  • 市長制度の拡大
    • ロンドンや一部の大都市圏では市長が設置されているが、多くの地域では市長制が導入されていない。
  • 自治体の財政難
    • 地方自治体の財政は緊縮政策の影響を受け、不足している。

3. 改革の内容

(1) 地方分権の推進

  • 戦略自治体(Strategic Authorities)の導入
    • 地域ごとの特性に応じた大規模な自治体を形成し、行政の効率化を図る。
  • 市長制戦略自治体(Mayoral Strategic Authorities)の強化
    • 市長を持つ自治体を拡大し、直接選挙で選ばれたリーダーが地域政策を主導。
    • 市長には、交通、住宅、雇用支援、スキル開発などの権限を付与。

(2) 地方自治体の再編

  • 二層構造の解消
    • 二層構造の自治体を廃止し、**統合自治体(Unitary Councils)**を全国に導入。
    • 政治家の数を削減し、行政の効率化を図る。
  • 地方議会の機能強化
    • 議会の独立性を確保し、中央政府の承認なしに条例を制定できる権限を付与。

(3) 財政改革

  • 統合財政決済(Integrated Settlements)の導入
    • 市長が複数の政策分野間で自由に予算を配分できる仕組みを導入。
    • 例:住宅開発と交通整備を一体的に進めることで、より合理的な資金活用が可能に。

(4) 「イングランド分権法(English Devolution Bill)」の制定

  • 地方分権の枠組みを法制化
    • 地方政府の権限を明確化し、地方分権を制度として確立。
  • 新たな市長の選出
    • 2025年5月:グレーター・リンカンシャー、ハル&イーストヨークシャーで市長を導入。
    • 2026年5月:さらなる地域で市長選挙を実施予定。
  • 自治体再編と地方リーダーの権限拡大
    • 市長や自治体が、新たな権限を政府に対して正式に要求できる制度を導入。

4. 改革への反対意見

  • 保守党(Conservatives)と改革党(Reform UK)からの批判
    • 「政府が選挙を延期し、特定の地域での選挙結果を操作しようとしている」との疑念。
    • 支持政党が異なる地域を合併させることなどにより地方の政治バランスを変える可能性があり、政党の基盤を破壊する懸念。
  • 市長制の強制導入に対する反発
    • 一部地域では市長制が適さないと考えられており、トップダウンの導入に反対。
  • 財政面での懸念
    • 地方自治体に新たな権限を与えても、適切な財源が確保されなければ十分な効果を発揮できない。
  • 公共サービスの統合による地域特性の喪失
    • 各地域の文化や歴史的な背景を無視した統合が進むと、地域の独自性が失われる可能性がある。

5. 今後の見通し

(1) 短期的な動向

  • 2025年5月:新たな市長選挙が実施される予定(グレーター・リンカンシャー、ハル&イーストヨークシャー)。
  • 地方分権優先プログラム(Devolution Priority Programme)に基づき、さらなる地域が市長制へ移行。
  • 「イングランド分権法(English Devolution Bill)」が制定され、地方分権の枠組みが法制化。

(2) 中長期的な展望

  • 自治体の再編が段階的に進行し、人口50万人以上の統合自治体(Unitary Councils)が全国的に導入される。
  • 統合財政決済(Integrated Settlements)が拡大し、地方自治体の財政運営の自由度が向上。
  • 市長制度の拡大により、地方政治の説明責任と住民参加が強化。
  • 地域の経済成長が促進され、公共サービスの満足度向上が期待される。
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